中村亨のビジネスEYE

親が認知症/介護状態と診断される前にやるべきこと

BUSINESS EYE

超高齢社会に突入した日本。
厚生労働省が発表した「平成30年版高齢社会白書」によると、
平成29年9月時点で、高齢化率27.7%となっています。

高齢化率の上昇により、主に下記2点のリスクも高まります。
・認知症の諸症状が発現し、日常生活に支障をきたす
・要介護認定され、身動きが取れなくなる

皆様は、ご家族やご自身が認知症や介護状態となった場合の対策をしていらっしゃいますか。

今回の【ビジネスEYE】のテーマは、
「親が認知症/介護状態と診断される前にやるべきこと」です。

親が高齢になる前に何でも話し合っておくべきなのですが、
なかなか思うように話し合いが進まないこともあるでしょう。
そうこうしているうちに、転倒による骨折や打撲といった軽度の怪我をきっかけに、
介護状態となってしまうことも少なくありません。

また、見逃せない点として「認知症」があります。
症状が出る前に締結した不動産売買契約や株式の売買契約においても、
認知症と診断されますと、ご本人であっても法的な手続が困難になります。
もちろん遺言書を作成することも難しいでしょう。

そこで、3つの切り口から対策を検討してみました。
(1) 後見人制度を活用する
(2) 名義を変えておく
(3) 暦年贈与(年110万円の非課税枠)を利用して贈与する

下記よりご確認ください。

(1) 後見人制度を活用する

「亡くなった母親の遺産分割の協議をしたいが、父親が認知症で話が進まない」
「認知症の親の介護費用に充てるため、本人の預金を取り崩せるか?」

上記のようなケースにおいて、
判断能力が不十分な人の代理人となって法的な援助を行うのが「成年後見人」制度です。
成人であれば年齢を問わず援助を受けることができますが、
高齢者が増加する中で、認知症の方の財産を守るしくみとして注目を集めており、
国で制度の普及に努めています。

 (2) 名義を変えておく

親が元気でいるうちに、不動産や株式の名義を子にしておくことも有効な対策です。
もちろん贈与税などを支払うケースもありますが、子の名義にしておけば、
売却の判断が子に託されますので、介護施設への入居費用などを
必要なときに換金することができます。

あくまで、親子間の信頼関係に基づく名義変更が前提となりますが、
子がその資金を他の目的(教育資金、住宅取得資金、娯楽資金等)のために
使ってしまう恐れもあり、タイミングの問題は残ると思われます。


 (3) 暦年贈与(年110万円の非課税枠)を利用して贈与する

「毎年110万円までは贈与税がかからずに、贈与ができる制度」である暦年贈与。
暦年(1月1日~12月31日)ごとに贈与を行い、
その額が年間110万円以下であれば、贈与税がかからない制度のことです。
数年かければ、かなりの額の贈与ができるので、相続対策としても検討される方が多いです。
しかし、注意点もあります。毎年、同時期・同金額の贈与は、
「連年贈与」と判断される可能性がありますので、避けた方がよいでしょう。

また、「受け取った人が通帳や印鑑を管理していない」
「自由に引き出せる状況にない」
という状況では、贈与があったとは認められません。
贈与の実態が伴っているかどうかが大切となりますので、
受け取った本人が通帳や印鑑の管理をするようにしてください。

さらに、相続開始(死亡)前、3年以内に行われた贈与については、
相続財産に持ち戻して計算をしなければいけないというルールもあります。
そのため、病気や認知症等が悪化してから慌てて贈与するのでは手遅れであり、
少し早めの段階から、贈与について親子で関心を持つことが大切でしょう。

【贈与するときに気を付けたいこと】

1.受け取った本人が通帳や印鑑を管理する
2.振込等で客観的証拠が残る形で資金の受け渡しを行う
3.贈与契約書を作成する
といった点を念頭に置いていただきたいと思います。

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著者プロフィール

中村 亨

日本クレアス税理士法人コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングコーポレート・アドバイザーズM&A代表。公認会計士・税理士。

監査法人トーマツを経て会計事務所を開業。600社程のベンチャー企業の経営・財務に携わる。

2005年に株式会社コーポレート・アドバイザーズ・アカウンティングを設立し、約100人のプロフェッショナル集団を築き上げる。著書に『「俯瞰」でわかる決算書』(ダイヤモンド社)、『不況でも利益を生み出す会計力』(東洋経済新報社)など。